最近では、2024年4月より始まる「運送業2024年問題」に関して、毎日テレビで報道されるようになりました。世間の関心も日に日に高まってきています。昨年末から荷主さんへの聞き取り調査なども頻繁に行われております。
ですが、この問題は急に始まったわけではありません。今、現在もすでにあるルールが2024年4月1日から少し厳しくなるだけです。運送業専門の小職としては、いままで騒がれなかったほうが不思議なくらいですが・・・。
ということで、現在のルールをきちんと理解することがとても大切になります。
現時点でもドライバーさんは無制限にお仕事ができるわけではなく、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準=改善基準告示」により、様々な時間管理についてのルールが定められております。
それでは現在の改善基準告示についてひとつずつ確認してまいりましょう。
先月にひきつづき今月は3つ目の話題
「ドライバーさんに関する時間について」
ドライバーさんの期間についてはいろんな用語があります。
その中でも大切なのは「拘束時間・労働時間・休憩時間・休息期間」の4つです。
まずは「拘束時間」について。
拘束時間とは出社~退社までの時間です。ともすると開始の点呼~終了の点呼と考えがちですが、そうではありません。
「おはようございます!」とドライバーさんが出社してから、「お先に失礼します!」と退社するまでの時間です。
一般的な職場ではタイムカードなるもので記録することが多いと思います。
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」には以下のように書かれております。
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
・使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
上記の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。
・自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
・自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
・自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。
・自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定 (いわゆる 36 協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。
賃金台帳の適正な調製
使用者は、労働基準法第 108 条及び同法施行規則第 54 条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第 120 条に基づき、30 万円以下の罰金に処される。
労働時間の記録に関する書類の保存
使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第 109 条に基づき、3年間保存しなければならない。
以上のようにドライバーさんの時間管理は運送会社のコンプライアンス面でとても重要です。タイムカードが存在する運送会社さんは稀ですが、賃金台帳も含めて正確な記録を残す社内体制を2024年4月に向けて、早期に構築されることを強くお勧めいたします。 安心・安全・高収益な運送事業実現のために!
来月は「ドライバーさんに関する時間についてPART2」です。お楽しみに。
2023年6月9日
© 行政書士武藤事務所