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2024年問題についての考察

2024年4月よりはじまる「運送業働き方改革」まで、残り半年を切り、

「物流の適正化・生産性向上に向けたガイドライン」なども発表されました。

ですが、この問題は急に始まったわけではありません。

今現在、すでにあるルールが2024年4月1日から少し厳しくなるだけです。

いままで騒がれなかったほうが不思議なくらい・・・。

ということで、現在のルールをきちんと理解することがとても大切になります。

現時点でもドライバーさんは無制限にお仕事ができるわけではなく、

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準=改善基準告示

により、様々な時間管理についてのルールが定められております。

先月にひきつづき9つ目の話題

「特例:休息期間分割」です。

業務の必要上、勤務終了後、継続8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合、次に掲げる要件を満たすものに限り、当分の間(原則2~4週間)、全勤務回数の2分の1を限度に、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。

分割された休息期間は、1回当たり継続4時間以上とし、合計10時間以上休息期間を与えなければなりません。

注意:睡眠時間の確保による疲労回復の観点から、継続した休息期間を確保することが重要です。

休息期間を分割することは本来好ましいものではなく、できる限り避けるべきもので

あることに留意しましょう。

少し難しい文章ですが、運送会社さんにとってはとても重要なルールです。

なぜかというと、運送会社さんの多くは、ドライバーさんが一日に運ぶ荷物が一社の荷物だけとは限りません。

また、たとえ一社だったとしても、1本目、2本目、3本目などと別れていて、朝一度積んで夕方までにおろして業務終了!などという運行は多くありません。

なぜでしょう?

そうです。1回の積み込みで積んだ荷物を一日かけておろしただけでは、運賃が安すぎてドライバーさんに満足なお給料を支払えないからです。

また、昨今では燃料の価格が高止まりしていて、1回だけの運行では燃料代まで賄えません。

結果として、一人のドライバーさんが一日に何本も、何社も荷物を運んで届けて、やっと帳尻が合うのです。

運送会社さんへ支払われる運賃が「標準的な運賃」に少しでも近づけばよいのにな~と思います。

では実際に現場でこの特例をどのようにして使うのか考えてみましょう。

12月は多くの運送会社さんが繁忙期です。

特に食品関係の運送会社さんは年末ギリギリまでお仕事が続きます。

12/18トラサポ運輸 ドライバーの武藤さんの一日に注目してみましょう。

鈴木ドライバーは朝5時に点呼を受けて車庫を出発しました。

6時にA社物流センターに到着して積み込み開始。

7時にはA社物流センターを出発してA社の各店舗へ向かいます。

A社の各店舗で荷物をおろし10時に業務完了。

次は隣町にあるB社物流センターに向かいます。

普段はB社物流センターまで1時間あれば十分到着できます。

11時にB社物流センター近くのコンビニで少し早めにお昼ご飯。

その後、13時からB社物流センターで積み込みを開始して14時にセンターを出発。

B社店舗に荷物をおろし終えて18時に車庫へ帰ります。

ところがこの日はクリスマス商戦に備えてB社物流センターはパンク状態。

「積み込みは17時以降でないとバースが空かない」と担当者から電話がありました。

こんな時に活躍するのが休息期間分割の特例です。

このまま17時に積み込みをして、各店舗を廻ると車庫へ帰れるのは22時になってしまいます。

武藤ドライバーはこの日、5時にスタートしていて、22時に終了したのでは、拘束時間が17時間で違反となってしまいます。

そこで休息期間分割の特例を使い、11時~16時までB社物流センター近くのコンビニにトラックを停めて休息に入ります。

ここで大切なのは休憩ではなく休息を取ること。

休憩休息は大きく違うことを以前にご説明しました。

あくまでも11時~16時まで5時間の休息が必要です。

なぜならば、休息は拘束時間にならないからです。

では休憩休息の違いをどのように記録で残すのか?

まずは、11時にB社物流センター近くのコンビニに到着したら、運行管理者から電話で終了の点呼を受けます。

5時間の休息をとり、16時になったら、今度は電話で開始の点呼を受けます。

当然トラックには携帯用のアルコール検知器が必要です。

12/18の武藤ドライバーの点呼簿は以下のように二行となります。

一行目:朝5時営業所にて対面で開始の点呼~11時トラックにて電話で終了の点呼。

16時トラックにて電話で開始の点呼~22時営業所にて対面で終了の点呼。

このように点呼簿が記録され、ドライバーさんがきちんと5時間の休息を取れたらば、

拘束時間は17時間(5時~22時)-5時間=12時間となります。

さらに次の日も5時から勤務予定のため休息期間は22時~5時=7時間ですが、日中の分割された休息期間が5時間ありますので、7時間+5時間=この日の休息期間は12時間となり、無事に違反にならなくなりました。

本来ならばB社物流センター内にトラックを停めて、何も心配なく休息できるのが理想ですが、センター内の駐車場は長距離トレーラーですぐにいっぱいになることもしばしば・・・。

事前にB社物流センターへ向かう途中のコンビニで長時間駐車可能な店舗を探すことも重要です。

国がトラックステーションをたくさん作ってくれるとよいのですが・・・。

運行管理者の業務の中でもドライバーさんの時間管理はとても重要です。

運行管理者さんが運送会社のコンプライアンスを握っていると申し上げても過言ではありません。

デジタコのある運送会社さんはまだまだ少なく、正確な記録を残す社内体制を2024年4月に向けて、早期に構築されることを強くお勧めいたします。

安心・安全・高収益な運送事業実現のために!

来月は「特例:2人乗務について」です。

お楽しみに。

2023年10月28日

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