4月よりはじまる「運送業働き方改革」の準備は進んでいますか?
準備を進める上で大切なことは、まず現在のルールをきちんと理解することです。
現時点でもドライバーさんは無制限にお仕事ができるわけではなく、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準=改善基準告示」により、様々な時間管理についてのルールが定められております。
それでは、先月にひきつづき12個目の話題
「特例:フェリー乗船について」です。
まずお伝えしたいのは、平成27年以前より運送業に従事している方々は、ひょっとしてこの改正をご存じないかもしれません。
トラックがフェリーを利用する場合、乗船時間のうち2時間を労働時間とし、残りを休息時間とする(労働基準局長通達)。一方、フェリー会社のサービス拡大などにより、トラックドライバーは乗船時間を実質的に全て休息にあてることができ、労働時間は生じていない状況であるため、通達の見直しを要望する労使合意がなされた。厚生労働省は通達を改正し、平成27年9月1日からトラックのフェリー乗船時間を全て休息時間とする取扱いとした。
一昔前はフェリーに乗っている時間のうち、2時間は労働時間だったんです。
ご存じの通り、現在では「休息期間」として扱いますので、お間違いなく!
では本題に入りましょう。
フェリーに乗船している時間は運転者としての仕事は一時休止となります。
そのため、勤務の途中でフェリーに乗船する場合、フェリー乗船時間については休息期
間となります。
したがって、休息期間8 時間(2 人乗務は4 時間、隔日勤務は20 時間)からフェリー乗船時間分をマイナスすることができます。
ただしその場合でも、マイナスされた休息期間がフェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2 分の1 を下回らないようにする必要があります。
具体的に確認してまいりましょう。
神奈川の運送会社さんへ福岡行の依頼がありました。
厚木にある物流センターから福岡へ10トン車の依頼です。
2月5日月曜日AM6:00に積み込みできるそうです。
帰り荷はありません。
とても大切な荷物なので、運賃は応相談とのこと。
あなたならどんな運行計画を立てますか?
2/5のAM5:00日常点検を済ませて点呼
この時に注意が必要なのはスタッドレスタイヤの残り溝の確認!
途中で雪が降り始めて高速道路上でスタックしてしまったら大変です。
その後厚木の物流センターで荷物を積んでいざ福岡へ。
距離は約1,000Kmです。
80Km/hで巡行して430も忘れずに。
14時間後の21:00に福岡へ到着。
そのまま着荷主の倉庫でおろして門司港に向かいます。
新門司発23:55のフェリーに乗船。
ここまでの拘束時間は19時間です。
ドライバーさん疲労困憊なので、2/6の20:45に横須賀港に到着するまでゆっくり休息していただきましょう。
この運行計画ではかなり厳しいですね。
途中で渋滞してしまったらフェリーに乗れません。
そもそも日付が変わらず拘束時間が19時間では隔日勤務も使えません。
なので、21:00に福岡についた時点で2/5は終了。
そこから8時間の休息を取り着荷主のところで荷物を卸して新門司港へ向かいます。
2/6のフェリーで横須賀へ戻り2/7の20:45までが休息。
その後営業所に戻り終了の点呼。
そうそう。
運行指示書も忘れずに提出しましょう。
ここで大切なのは3日工程ということです。
往路高速代約25,000円、往路燃料代約25,000円、復路フェリー代約120,000円、人件費3日分約60,000円の23万円が最低限の経費となります。
それに運送会社の利益を考えたら30万円以上でないと成り立ちません。
10トン車1日10万円×3=30万円から考えても妥当な料金でしょう。
ちょっと話がそれました。
上手にフェリーを利用して安全な運行計画を立てましょう。
11月末には労務費の価格転嫁の指針が公正取引委員会より発表されました。
国土交通省では標準的な運賃も見直しが行われています。
昨年以上に運賃交渉を積極的に行い、安心・安全・高収益な運送事業を実現させましょう!
来月は「一の運行は144時間までについて」です。
お楽しみに。
2024年2月1日
© 行政書士武藤事務所