先月に引き続き「改正改善基準告示守れていますか?」を一緒に考えていきましょう。
と
その前に、4月1日よりいろいろなルールが変わります。
主だったものを3点ご紹介いたします。
①運送契約締結時の書面交付義務化
②実運送体制管理簿の作成・情報通知の義務化
③荷役時間や荷役作業・附帯業務の「業務記録」への記録義務の対象が全車両へ拡大
難しい言葉が並びますので一つずつ確認してまいりましょう。
まずは①
そもそもお客さんと運送契約書を交わしていますか?がスタートです。
「4,000円の収入印紙を貼るやつ」と申し上げればわかりやすいかもしれませんね。
この契約書には大雑把な内容しか書かれていないことが多く個別具体的な内容は「別紙覚書による」なんてなっております。
ところがその別紙覚書が存在せず口頭で契約が成立しているケースが多く見受けられます。
口約束でも荷主や元請けさんとの関係が良好な時は何も問題となりませんが、いざ問題が起きると運送会社さんが泣いているケースをよくお見受けいたします。
そんなことが起きないように、以下の6つの内容を記入した書面を作成しなければなりません。
1.運送役務の内容・対価
2.運送契約に荷役作業・附帯業務等が含まれる場合には、その内容・対価
3.その他特別に生ずる費用に係る料金(例:高速道路利用料、燃料サーチャージ等)
4.契約の当事者の氏名・名称及び住所
5.運賃・料金の支払方法
6.書面を交付した年月日
どれも当たり前な内容ですがこの内容が決まっていないのに「まず走る」がこの業界の不思議な商習慣です。
せっかく遠くまで走ったのにそれに見合った運賃がいただけないなんてことが起こらないようにしっかり書面を作成しましょう。
なおこの書面は紙でなくメール本文も可能です。一年間の保存期間がありますので、メールがどこに行っちゃったか分からなくならないようにしっかり管理してください。
次に②
これは少し厄介です。
簡単に言うならば傭車さんへ仕事を出すときに作成する帳簿です。
1.5t以上の荷物を運ぶ時となっていますのでほぼほぼ作成しなければいけません。
記載する内容は以下の3点です。
①実運送の商号又は名称
②実運送事業者が実運送を行う貨物の内容及び区間
③実運送事業者の請負階層(一次請け、二次請け等)
一番大変なのが③でしょうか?
数次の下請けが当たり前の業界で、出した仕事がどんな経緯で実運送会社へ流れたのか把握するのは非常に手間がかかるでしょう。
丸投げは出来なくなるのかもしれません。
となると、やはりドライバーさんの確保が重要になってまいりますね。
最後に③
今までも「車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両」には義務でした。
記録をしている会社さんはあまり見かけませんが・・・。
4月1日からは全車両義務となります。
具体的な内容は
1.日時
2.担当ドライバー名
3.集荷地点名
4.到達時刻
5.到達指定時刻
6.荷待・待機時間
7.附帯業務時間
8.積込み・取卸し時間
9.出発時刻
10.荷役作業の内容
11.荷主担当者の確認など
そもそも日報に記載のあるものが大半ですが、御社の日報に無いものは追記しなくてはいけません。
という具合に4月1日からいろいろなルールが追加・変更となりますのでご注意ください。
では本題に戻り「1日の拘束時間と休息期間」について。
まずは1日の拘束時間について。
もう大丈夫だと思いますが、拘束時間=始業の点呼~終業の点呼 までです。
原則「13時間」以内。
上限「15時間」
「14時間超」は週2回が目安。
この3つの数字のうち一番重要なのは上限「15時間」です。
開始の点呼がAM6:00のドライバーAさんはPM9:00(21:00)までです。
注意が必要なのは、ドライバーさんの一日はAM0:00からではなく、始業から24時間で管理します。
食品の冷凍冷蔵輸送の会社さんに多い日マタギのお仕事の場合、PM9:00にスタートするドライバーさんは次の日のPM9:00までの間で考えてください。さらに例外規定がありますが、それは後日ご案内するとします。
このAさんは毎日拘束時間が15時間だと仮定しましょう。
1か月間は何日お仕事できますか?
先月ご案内した1年間3300時間の拘束時間から導き出した、1カ月の拘束時間275時間を1日の拘束時間15時間で割るとなんと!18日。
週休3日と週休2日を交互に勤務してギリギリです。
いかがでしょう?
全然走れないじゃん!
と思われている方が多いと思います。
そしてこの拘束時間を管理するのにとても優れたツールが存在します。
トラック協会さんが作成している拘束時間管理表です。
なんと無料で公開してくれています!
まずは御社のドライバーさん全員の始業の点呼時間と終業の点呼時間を入力してみてください。
この管理表を使用しないで「ウチは2024年問題をクリヤーしてます!」とおっしゃる会社さんがいらっしゃいますが、本当に大丈夫ですか?と心配になります。
そして一日の拘束時間と表裏一体なのが休息期間です。
似ていますが休憩時間とは全く異なります。
会社からの拘束を受けないドライバーさんが自由に過ごせる時間です。
睡眠時間や趣味の時間などどのように過ごすのも自由な時間です。
注意が必要なのは、始業から数えて24時間以内にこの休息時間9時間を確保しなければなりません。
大切なのは睡眠時間です。人間の脳は睡眠によって回復すると考えます。
運転中のとっさの判断などに影響が出る時間です。深酒やオンラインゲームに興じて睡眠時間が確保できなくなるような生活は避けなければなりません。
会社としても始業の点呼時に健康状態の把握と共に睡眠時間の確認も行う必要があると考えます。居眠り運転による追突事故はプロドライバーとしてあってはならないと思います。
ただし、2024年4月からは「予期しえない事象」がスタートいたしました。
予期しえない事象とは
次のいずれかの事象により生じた運行の遅延に対応するための時間であること。
① 運転中に乗務している車両が予期せず故障したこと。
② 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航したこと。
③ 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖されたこと又は道路が渋滞したこと。
④ 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となったこと。
※ 通常予期し得ないものである必要があり、例えば、平常時の交通状況等から事前に発生を予測することが可能な道路渋滞等は、予期しえない事象に該当しません。
上記の4つに該当した場合は一日の拘束時間から除くことが可能となりました。
ただし客観的な記録により確認できる時間であることが必要なため、次の①の記録に加え、②の記録により、当該事象が発生した日時等を客観的に確認できる必要があります。(①の記録のみでは「客観的な記録により確認できる時間」とは認められません。)
① 運転日報上の記録
・ 対応を行った場所
・ 予期し得ない事象に係る具体的事由
・ 当該事象への対応を開始し、及び終了した時刻や所要時間数
② 予期し得ない事象の発生を特定できる客観的な資料
例えば次のような資料が考えられます。
ア 修理会社等が発行する故障車両の修理明細書等
イ フェリー運航会社等のホームページに掲載されたフェリー欠航情報の写し
ウ 公益財団法人日本道路交通情報センター等のホームページに掲載された道路交通情報の写し
(渋滞の日時・原因を特定できるもの)
エ 気象庁のホームページ等に掲載された異常気象等に関する気象情報等の写し
予期し得ない事象に遭遇し、運行が遅延した場合、1日の拘束時間は、実際の時間から予期し得ない事象への対応時間を除いた時間になります。
どんなに緻密に勤務計画をたてても、道路を走る以上は予期しえないトラブルが起きるものです。
予期しえなかったことをきちんと説明できる資料を保管しておきましょう!
注意が必要なのは表裏一体の休息期間は対象外です。
きちんと9時間以上の休息期間を取ってから、次の日のお仕事をスタートしてください。
次回は、「運転時間」確認していきたいと思います。
お楽しみに。
2025年4月1日
© 行政書士武藤事務所